医療負担の増加と歯科業界の今後
グラフが示すように年々日本の医療費は増加しています。
図は21年度までのグラフですが、平成25年度では38兆円にまで膨れ上がっています。
この膨れ上がった医療費はどこに負担が来るのかというと、もちろん国民に降りかかってきます。
昔医療費負担額が1割だったものが2割へ、そして3割と推移してきました。
恐らく確実に医療費は5割までは上がるはずです。
その前に4割になるでしょうが。
そうなってくると何が起こるかというと、病院や歯科、薬局に行く人が少なくなります。
ちょっとくらい具合が悪くても、医療費が高いからいいや。
患者側で調整をしてしまうわけです。
これは間違いなく起こることです。
貧富の差の激しい欧米では当たり前の現象であり、もはや昔の全世帯中流家庭という幻想は崩壊し低所得層が増加してきました。
また所得が増えないにもかかわらず社会保障費や税が増えているため更に国民の生活は圧迫されています。
それゆえこどもを多く作ることが出来ない→人口が増えない→税収が減る
という最悪のスパイラルに嵌ってしまっています。
こうなってくると、どこかで現状の制度が崩壊するか、無理に今の制度を続けるため歪な形ができあがるかという状態になっています。
医療費が増えていると書きましたが、では実際その内訳はどうなのか?
38兆円にも上る医療費の中で、医科が占める割合は27兆円ほどで75%におよぶ割合を占めています。
次いで薬局。こちらが8兆円ほど約17%近くを占めています。
残りの約3兆円未満。これが歯科が占める割合で、全体の10%にも達していません。
コンビニよりも多いと言われる歯科ですが、実際の医療費はかなり少ないのです。
それだけ歯科医院の経営は苦しい状態ということになります。
ちなみに平成21年から平成25年までに医療費が10兆円!! ほど増加しましたが、その中で歯科で増えた医療費は数千億円にとどまります。
つまりあとは薬と医が増加分をもっていっているわけです。
さて、ここでどんどん医療費が増加していくとどうなるかは記述したとおりです。
お客さんが減った場合歯科医院の経営はどうなってしまうのか?
今健全な経営ができている医院はいいのですが、ギリギリ経営している医院も多くあります。
もっとも数が多すぎるので、半分くらいに減ってしまっても実際は大丈夫かもしれませんが、歯科医院が多く廃業する事態が起きた時に歯科業界がどのような道筋を辿るのかまったく読めません。
歯科医院は実は大きな過渡期に立っています。
従来の保険に頼った診療を続けている医院は現時点で逼迫しています。
次々と医院を閉めているのです。
この中で生き残る医院で良いと思える治療を受けなければならないのです。
増大していく医療費の中で、どのように国民が医療にお金をかけるのか?
病気やむし歯などは避けようと思っても患ってしまうものなので、あらかじめ医療にかける経費を各家庭で決めなければなりません。
その上で、その度合いを超えた治療を受けるのか、それとも我慢をするのか選ばなければなりません。
病気にかかったら、その度合いによって支払う治療費は変化するのですから、経費がいくらかかるかは読めません。
しかし、病気にかからないように予防に力をいれるのでしたらどうでしょう?
予防に関しては、病気にならないようにかならず施行する試みですから、予防に年間いくらかけるか決定できます。
また、それでも軽い病気にかかる可能性を考えて多少の猶予を持たせれば、各家庭が支払う医療費は可視化することができます。
もしもの備えをプールしつつも、常に医療費は一定額をかける。
こうすることで医療費をコントロールするしかありません。
だったら何も考えないで病気になったら医院のお世話になるでいいんじゃないか?
これに関してはそうともいえますし、違うともいえます。
ただし、予防に費用をしっかりかけたほうが病気を早めに見つけたり、早めに治療できたりします。
その分快癒も早く医療費が抑制できると考えれば予防に費用をかけたほうがいいと思えますし、
効果が不透明だからやらない。これもまた間違いではありません。
医療費が高騰する中で、それぞれの家庭がどのようなスタンスで医療に向き合うのか?
およそ健康で病気と全く縁がなければ悩む必要が全く無い事柄ですが、不老不死でもないかぎり、必ずなんらかの病気を患うことになります。
その時に考えればいいことかもしれませんが、自分や家族の体のメンテナンスを考えるのもひとつこれからの義務となってくるのではないかと思います。
歯科に関しては、生まれた赤ちゃんはむし歯菌を持っていませんから、赤ちゃんに接する人達がむし歯でなければむし歯になりにくい体質になります。
そうなるだけで、格段にむし歯のリスクは減るので医療費の逓減に繋がります。
まずは自分の歯をしっかり治し、まわりに赤ちゃんがいる場合は3歳までむし歯菌が移らないように注意する必要があります。
世の中の多くの人の常在菌に占めるむし歯菌の割合が低下することによって、後の世代の人達のむし歯リスクはどんどん低下していきます。
予防は自分のためだけでなく、まわりのためでもあるのです。
むし歯が無い社会になると歯科医師はいよいよ持って廃業になりますが、その場合は……歯科医師の方には予防をメインにやってもらうしかありません。
ひょっとすると、日本で育成された歯科医師が海外に輸出されるような状態になるのかもしれません。
海外で診療所を開き、そこで医院を運営する。
世の中にある業界がすべからく海外に進出している流れから、日本の医歯薬も海外に打って出る流れになるかもしれません。
TPPで一時期医療も騒がれてきましたが、いずれ世界に向かっていくことになるはずです。
極少数ですが、医師でも海外で活躍する人材が出ています。
世界という市場で戦えれば、歯科医師過剰という今の状況や、人口の減少という問題にも対応できます。
最初は少数の人間しか成功しないでしょうが、保険という枠組みから解き放たれた方々が新たな道を示すことで今の現状が打ち破られると思います。
多少夢物語が入っていますが、他の業界がやっていることを歯科で行うだけなので不可能ではないはずです。
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